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【動脈硬化】ガンより恐ろしい病気、「重症下肢虚血」を知っていますか?

目をつぶる、片足が見えないお年寄り 病気
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動脈硬化心筋梗塞脳梗塞動脈瘤などといった数多くの病気の原因となり、場合によっては命にかかわります。

その中でも、最も重症といっても過言ではないのが、今回ご紹介する重症下肢虚血(じゅうしょうかしきょけつ)(CLTI=clitical limb--threatening ischemia)です。

どのくらい重症かというと、

この病気と診断を受けて、治療を行わなかった場合、
およそ1年で半数の方が命を落とすか、足を切らなければならない

というくらい、重症なのです。

このように、重症下肢虚血はとっても恐ろしい病気なのですが、がん脳卒中心筋梗塞などに比べると、知名度がとても低い病気でもあります。今回は、この重症下肢虚血(CLTI)について、わかりやすく解説します。

 

■目次

重症下肢虚血(CLTI)って、どんな病気?

重症下肢虚血(CLTI)」とは、書いて字のごとく

重症=病状が重たい
下肢=足の
虚血=血が足りない

という病気です。

簡単にいうと、動脈硬化によって血管が狭くなりすぎて(もしくは詰まってしまって)血液が流れず、足に流れる血が足りなくなったために起こる病気です。いわば「動脈硬化のなれの果て」といった状態です。

重症下肢虚血の症状

重症下肢虚血(CLTI)の症状は、黙っていても痛い(安静時疼痛)、もしくは潰瘍壊死(足の傷)がある)

下肢閉塞性動脈硬化症(LEAD)の重症度分類でみると、

  • Fontaine分類→ⅢおよびⅣ度
  • Rutherford分類→Ⅳ~Ⅵ度

上記にあてはまるものが重症下肢虚血(CLTI)と呼ばれます。

 

重症下肢虚血は、何がそんなに恐ろしいのか?

重症下肢虚血(CLTI)の恐ろしいところは、単に足を失う可能性があることだけではありません。5年生存率約40%前後と非常に低く、治療しなければ命を失う可能性が高い病気であることです。

 

5年生存率ってどんな意味?

ここで、よく聞く「5年生存率」という言葉について、解説を加えておきます。

5年生存率(5ねんせいぞんりつ)とは、ある疾患の予後を測るための医学的な指標である。

主として癌について用いられ、診断から5年経過後に生存している患者の比率を示す。

~Wikipediaより引用

 

 

がんの5年生存率って、どのくらい?

ここでは、参考のために、主ながんの5年生存率についてみてみます。

最新の統計では、

  • 大腸がんの5年生存率は76.8%
  • 肺がんの5年生存率は44.7%
  • 胃がんの5年生存率は74.5%
  • 乳がんの5年生存率は93.6%
  • 膵臓がんの5年生存率は9.2%

全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について
5年生存率、10年生存率データ更新
グラフを描画する生存率解析システムKapWebなどにて公開
国立研究開発法人国立がん研究センター

となっています。

上の数字をみると、早期発見が難しく5年生存率が非常に低いすい臓がん以外のがんは、のきなみ70%を超えています

5年生存率が約40%前後と非常に低い重症下肢虚血は、ほとんどのがんよりも死亡率が高い病気なのです。

 

重症下肢虚血(CLTI)の死亡率が高いのはなぜ?

重症下肢虚血(CLTI)は主に足の病気なのに、どうして命まで取られるのでしょうか?

それは、先ほども述べた通り、重症下肢虚血は「動脈硬化のなれの果て」だからです。

重症下肢虚血に至るほど血管がボロボロになるまでには、通常は長い年月がかかります。血管がボロボロになるのは、足に限ったことではありません。程度の差はありますが、心臓や脳に血液を送る大事な血管にも動脈硬化を起こし、血が足りなくなる症状を引き起こします。

  • 心臓に行く血液が足りない⇒心筋梗塞
  • 脳に行く血液が足りない⇒脳梗塞

というように、重症下肢虚血の患者さんは、いずれもそれ単体で命に係わる病気をいくつも同時に抱えていることが多いのです。

また、それらの病気の影響で歩けなくなってしまった方寝たきりの方などにも重症下肢虚血はよく発症します。そうなると、「治療で足の傷は良くなったけど、肺炎で命を落としてしまった。」など、別の病気を起こしてくる確率が非常に高いのです。

 

重症下肢虚血(CLTI)にはどんな症状があるの?

重症下肢虚血(CLTI)の症状は、上で述べた通り

  • 安静時疼痛(じっと黙っていても足が痛い)
  • 潰瘍・壊死(足の色が紫色になり、傷が治らない)

の2つです。

 

重症下肢虚血(CLTI)の安静時疼痛

重症下肢虚血(CLTI)で起こる安静時疼痛は非常に激しいものであり、痛みを抑えるために麻薬系の鎮痛剤が必要となることも珍しくありません。

夜間、痛みで眠れないということも良く起こります。

足を下げると痛みが良くなり、足を上げると痛みが増す

というのも重症下肢虚血(CLTI)による足の痛みの特徴の一つです。

 

重症下肢虚血(CLTI)でみられる足の傷

個人ブログなので、写真を使えず申し訳ありません。

字で書くと非常に分かりにくいので、そのうち絵を載せようと思います。

潰瘍(かいよう);

病気のために,粘膜や皮膚の表面が炎症を起こしてくずれ,できた傷が深くえぐれたようになった状態です

「病院の言葉をわかりやすくする提案」18.潰瘍より引用

切り傷や擦り傷、刺し傷とちがい、自然にできた傷がほとんどです。円形や楕円形のことが多く、中がえぐれたようになっています。潰瘍の中はジクジク濡れていることもありますし、カピカピに乾いていることもあります。

 

壊死(えし);

細胞の一部が死んで腐ることです。

壊死を起こした部分は、黒く炭のような色に変わります。

真っ黒な部分をはがしてみると、中は腐って膿(うみ)がたまり、悪臭を放っていることも少なくありません。

指などが壊死に陥ると、放置しておけば乾いてミイラ化し、いつしか知らないうちに取れてしまうこともあります。

また、その過程で感染を起こす(ばいきんがつく)こともあります。

 

潰瘍にしても壊死にしても、感染が合併すると、高い熱が続いたり、いろいろな臓器に負担がかかることで、とたんに全身の状態が悪くなります。

 

この段階では、非常に激しい痛みを訴える方もいれば、逆に全く痛みを訴えない方もおられます。

 

重症下肢虚血(CLTI)でみられるその他の症状

重症下肢虚血(CLI)を起こした足は、例外なく

冷たくて(冷感)
色が悪い変色;この場合は青白くなる、もしくは紫色がかる

です。

 

糖尿病を合併していないケースでは、たいてい足は乾いており、ひびわれていることも少なくありません。

 

重症下肢虚血(CLTI)の検査

私たちが外来で、重症下肢虚血(CLTI)を疑ったときに行う検査をまとめてみました。

「検査多いね~」と(本人だけでなく家族の方からも)言われることもあります。

特に重症下肢虚血の患者さんは体力が落ちていたり麻痺があったり、色々な理由で病院に来るだけで疲れて調子を崩してしまう、というような方も多いので、検査を受けて頂くだけでいつも一大事です。

いつも検査をオーダーしながら「大変申し訳ないです…」と思うのですが、いずれもどうしても必要な検査なのです。

◎足に虚血があることを確認するために行う検査:ABI(足関節上腕血圧比)
◎傷の周囲の皮膚に血液が流れているかどうかを確認する検査:SPP(皮膚灌流圧)
〇足の血管のどこがつまっているか、もしくは狭いのかを確認する検査:
下肢動脈エコー,下肢動脈CT,下肢動脈MRI
〇他の病気が合併していないかどうかを確認する検査:
胸部レントゲン写真,心電図、心エコー(心臓超音波検査),血液検査
△必要に応じて行う追加検査:
胸腹部CT検査、冠動脈CT検査、もしくは心臓カテーテル検査,頭部CT/MRI検査

 

重症下肢虚血(CLTI)の治療

重症下肢虚血(CLTI)の治療は、「集学的(しゅうがくてき)治療」といわれます。

足の血液の流れを回復させる治療は欠かせないものですが、それ以外にも

  • 傷に対する治療
  • 糖尿病・腎臓病・心臓病・肺炎など合併症に対する治療
  • 栄養状態を良くする治療
  • リハビリテーション

などを、同時進行で行う必要があるからです。

 

重症下肢虚血(CLTI)の治療において大切なこと

重症下肢虚血(CLTI)患者さんの治療にあたって、大切なことがあります。

それは、「病院内の各職種のチームワーク」です。

重症下肢虚血の方の病状は非常に複雑であり、足の状態ひとつにしても、同じ状態の方は一人もおりません。なので、例えば循環器内科・血管外科・形成外科などといったどこか一つの診療科だけしっかり診れれば良いというわけではありません。

それらの診療科とともに、

  • 正確な検査を素早く行い診断を支えてくれる臨床検査技師さん
  • 高圧酸素療法やカテーテル治療に従事してくれる臨床工学技士さん
  • 実際に患者さんの生活を支え、病気について指導を行う看護師さん
  • 栄養状態を改善させる栄養士さん、
  • 理学療法士作業療法士さんなどのリハビリテーションスタッフ
  • 薬の使い方などの指導を行う薬剤師さん

など、医師以外の医療従事者(いわゆるコメディカルスタッフ)の役割が非常に大きなものとなるのです。

実際に受診してみても、その病院の職員さんのチームワークがどんな感じかなどはなかなか見分けにくいところだと思います。少なくとも、外来で対応してくれたスタッフ(事務員も含めて)の過半数が「なんだか感じ悪い?」と思ったなら、その病院はハズレかもしれません。

 

まとめ;重症下肢虚血(CLTI)と言われたら

重症下肢虚血(CLTI)は、あまり知られていませんが、命に係わる非常に重要な病気の一つです.

ただ単に「足をちょっとぶつけて傷ができた」ということとは違い、原因は動脈硬化その他による血流障害です。

動脈硬化は全身に及ぶことがほとんどであり、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病や腎臓病など、ほかの大きな病気を合併していることもよくあります。適切な治療を行わなければ、1年のうちに半数の方が足を切断する、若しくは命を落とします。

 

重症下肢虚血(CLTI)を疑う場合は?

一刻も早い適切な治療が必要ですので、速やかにお住まいの地方で重症下肢虚血(CLTI)の治療に力を入れている医療機関を受診してください。

 

 

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