健康診断で、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった「生活習慣病」を指摘される方が増えています。
実際に、健康診断で何らかの異常を指摘される「有初見率」は58.3%と高く、健康診断を受けた人の2人に1人以上は何か所見があったということになります。
(厚生労働省:「定期健康診断結果報告」より引用)
そのくらい多い生活習慣病ですが、まず、指摘されても病院に受診に来てくださる方は比較的少ないです。来てくれても、その後継続的に通院してくださる方というと、ますます少なくなります。
そして、「コレステロール高いって言われてたけど放っておいたら心筋梗塞になっちゃった…」という方が必ず出てしまいます…
もっと早く治療に来てくれれば、命を失ったり重い後遺症になったりと、悲しい思いをすることはなかっただろうにな、といつも歯痒く思っています。
そもそも、「生活習慣病」というくらいなので、大本を正せば生活習慣に問題があるということになるのですから、その生活習慣を整えれば、病気になる確率は大幅に減ります。
ということで、今回は、病院に行かなくてもできる生活習慣病の治療=生活習慣を整えるポイントについて説明します。
■目次
まず食事を見直そう
生活習慣病の最も大きな原因の一つが、食事です。
生活習慣病にならない・もしくはこれ以上ひどくしないための食事には、いくつかのポイントがあります。忙しい人でも今すぐできる、簡単な食事管理の方法をいくつかご提案します。
1日3食食べる
最近、ダイエット目的の断食が流行しているようですが、医学的にみるとおススメはできません。
まずは1日3食、特に朝食をしっかり食べることが大切です。
朝しっかり食べてから出かけると昼・夜の食事のドカ食いを防ぐことができ、結果的に1日の総摂取カロリーが減ります。
朝ごはんの支度が面倒な場合は、コーンフレークに牛乳をかけて食べたり、ヨーグルト+バナナなど、手間なくすぐ食べられるものを常備しておくと良いですよ.
理想的な食事は、一汁三菜
日本人の体質には、やはり和食を中心とした一汁3菜の料理が良く合います。
あえていうと、ちょっと塩分が多いのが玉にきずですが…
外食やコンビニだとどうしても単品メニューになりがちで,単品ものはどうしても、米や小麦粉などの炭水化物が食事の中心となります。
炭水化物は身体を動かすエネルギーとしてとても重要な栄養素の一つですが、使わずに余った分は脂肪として身体にたまります。
仕事が肉体労働系ならエネルギー不足は怪我のもとですが、デスクワークが中心の方の場合、食べ過ぎは肥満への第一歩です
外食のときには、できれば定食が望ましいでしょう。
それが難しい場合は、せめて味噌汁を追加で頼んでみてください。
味噌は豆を原料とした発酵食品であり、身体に比較的優しい塩分です。具入りの味噌汁であれば、豆とともにワカメや豆腐など、具の栄養も少しですが取ることができます。ただし、塩分もそれなりにfくまれていますので、朝晩の食事で調整が必要となります。
どうしても丼ものが食べたくなったら、一緒に味噌汁やサラダやヨーグルト、果物などを取ると良いですね。
「ラーメン+おにぎり」「パスタ+パン」といった、炭水化物のダブル買いはやめましょう。
塩分は控えめに。
「塩分」の管理は、まずはザックリ始めましょう。
外食やコンビニに行ったとき、何を食べるか迷ったら、「味が薄い方」「あっさりした方」のメニューを選んでください。
例えば、
といった感じです。
食事内容は1週間単位で管理する
接待で夜食べ過ぎた、家族との会話が弾んでついついドカ食いしてしまった、という場合も必ずあります。
そんなときは、昨日はちょっと食べ過ぎたから今日は少しカロリーを抑えめにしよう、などという感じで調整してみましょう。
2,3日で帳尻を合わせることは難しいかもしれませんが、例えば1週間を1単位として考えると、意外とうまくいきます。
例えば、「今週は木曜日の夜に宴会の予定があるから、それ以外の日はあっさりした夕食を食べよう」という感じだと、働いている方でも無理なく調整できるのではないでしょうか。
食べることは人生の楽しみの一つでもあります。あまり過度に制限しすぎると、今度はその反動で連日ファストフードを食べまくる、などの極端な行動に出てしまう可能性があります。
飽食の現代で「好きなものを好きなだけ食べて健康を維持する」ということは非常に困難ですが、計画を立てれば、ある程度好きなものを食べることが可能です。
アルコールは控えめに
「アルコール類は一滴も飲んではいけない」ということではありません。
少量のアルコールは血管を開いて血圧を下げますが、飲みすぎると逆に血圧が上がります。
一日の適正飲酒量は、男性の場合、日本酒換算で(アルコール度数15%とすると)1日1合以内とされています。
ちなみに女性は体質的にアルコールに弱い方が多いため、その半分くらいが適量です。
お酒の1単位(純アルコールにして20g)
ビール (アルコール度数5度)なら 中びん1本 500ml 日本酒 (アルコール度数15度)なら 1合 180ml 焼酎 (アルコール度数25度)なら 0.6合 約110ml ウイスキー (アルコール度数43度)なら ダブル1杯 60ml ワイン (アルコール度数14度)なら 1/4本 約180ml 缶チューハイ (アルコール度数5度)なら 1.5缶 約520ml
アルコール量の計算式 お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8
例)ビール中びん1本 500×[5÷100]×0.8=20
やっぱり運動はとっても大事!
外来で運動を進めても、「ジムに通う時間もお金もないし…」「そもそも会社で動いてるからいいよね~」なんていって、なかなか乗り気になっていただけないことの方が多いです。
生活習慣病の予防・治療のための運動であれば、お金のかかることは一切不要です。
誰でもできる健康管理法、それは「歩くこと」です。
毎日30~1時間のウオーキングができれば理想的です。
ですが、毎日仕事に行っていると、なかなかその時間を捻出するのは難しいかもしれません。
最近出てきた研究結果では、同じ60分間歩くのであれば、60分×1回と10分×6回では、運動効果は変わらないとされています。
毎日まとまった60分を捻出するのは難しくても、ちょっとした買い物や遠回り、一駅多く歩くなどで10分×6回なら何とかなりますよね。
すぐに体重が落ちるとか、明らかに目に見えて健康度が上がるというわけではありません。
ですが、このくらいの運動でも、長年継続すると、生活習慣病の進行を防ぐとともに、筋力及び体力の低下を抑えることもできるのです。
万歩計で、1日の歩数を知るところからはじめよう
全く運動習慣がない方は、まず1日に自分がどのくらい歩いているかを知るところからです。
健康のためには、1日6000~7000歩くらいは歩くと良いとされていますが、車通勤&デスクワークだと、下手したら1日2000歩行かないことも結構あります。
最近は、スマートフォンに歩数計がついているものがほとんどですので、あえて専用の歩数計を買わなくても計測が可能です。
毎日の通勤を、運動に。
せっかく歩いて通勤されている方は、その時間を有効な運動時間に変えましょう。
といっても、「走って通勤しましょう」というつもりはありません。
エスカレーターより階段、というのは基本です。
その他に、「横断歩道」、もしくは「電柱と電柱の間」くらいの短い距離から小走りをしてみると良いでしょう。
通勤中なので、息が切れない程度で構いません。
毎日やっていると、少しずつ息が切れるまでの距離が延びていくはずです。
禁煙のススメ
今回ご紹介する中で一番お金がかからない、もしかしたら逆にお金が貯まる健康法が「禁煙」です。
皆さまご存知の通り、タバコは健康を害します。
40歳の時点でたばこを吸っている人は、吸っていない人と比べて男性で約5年、女性で約4年、余命が短いというデータもあります。
(平成18年度厚生労働省研究班のデータより)
どうして寿命が短くなるのでしょうか?
タバコを吸うことによって、
- 動脈硬化の進行による冠動脈疾患および脳卒中
- ほとんどすべてのガン
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息などの呼吸器系疾患
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 歯周病
- メタボリックシンドローム
などにかかる率が明らかに高くなるからです。
生活習慣病の方は、そうでない方に比べて動脈硬化の進行による冠動脈疾患および脳卒中のリスクが高いです。
タバコを吸うと、ダブルパンチで動脈硬化が進みます。
睡眠
過去に当サイトでもご紹介しましたが、睡眠不足は明らかに生活習慣病に良くないようです。
まとめ
いつも何気なくやっている習慣をほんの少し変えるだけで、生活習慣が整い、病院とは縁のない生活を手に入れることができます。
食事、運動、節酒、禁煙。
まずはどれか一つだけ始めてみませんか?
コメント