日本の中高年の100人に1~3人がかかっている「閉塞性動脈硬化症」。
この病気を疑ったとき、病院ではどのような検査が行われるのでしょうか?
今回は、「閉塞性動脈硬化症」をはじめとした「血管がつまる病気」を診断するときに病院で行われる検査について、簡単に解説します。
☆閉塞性動脈硬化症について、詳しくはこちらの記事をどうぞ。
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■目次
ABI(足関節・上腕血圧比、Ankle Brachial Index)
両方の腕と足に血圧計を巻き、血圧を同時に測ります。
この時測った足の収縮期血圧(上の血圧)を上腕の収縮期血圧で割った値がABIです。
ABIの正常値は、0.9~1.3
0.9以下の場合は、足の動脈に詰まりや狭いところがある可能性があります。
精密検査をおススメします。
数値が低ければ低いほど、足の動脈の病気が重たい可能性があります。
脈波伝播速度(PWV)
血液は、心臓から送り出されて全身を巡り、最終的に心臓に戻ります。
血液を送り出すときには心臓が収縮し(ちぢみ)、中に入っている血液に圧をかけています。
- 動脈硬化のないしなやかな血管の場合には、圧(拍動)が血管の壁に吸収されるのでPWVの値は小さくなります。
- 逆に動脈硬化で硬くなった血管では、圧(拍動)が吸収されることなく伝わるので、PWVの値は大きくなります
PWVの基準値は年齢・性別によって異なります。ABIと同時に測定することができ、測定結果もABIと同時に見ることができます。
皮膚灌流圧(SPP)
皮膚まで血液が届かないと、栄養や酸素も届かなくなるため、傷が治りにくくなります。主に重症下肢虚血を疑う患者さん(=安静時疼痛・潰瘍・壊死のある患者さん)や血管が非常に硬い人工透析患者さんに用いられる検査です。
レーザー光を発する検査用の機器(プローブ)を皮膚の表面にあて、カフ(血圧を測るときに巻く布ベルト)を巻き、血圧計と同じ要領で圧を加えて測定を行います。
健康な人の基準値は、およそ70mmHg以上といわれています。
- SPPが40mmHg以上あれば、潰瘍や壊死が治る可能性が高い
- SPPが30mmHgを下回ると、治療で血流を回復させなければ、潰瘍や壊死が治る可能性は非常に低い
ABIとSPP、どこが違うの?
ときどき患者さんから、
「ABIとSPP、同じような検査だから、どちらか片方やればいいんじゃないの?」
と聞かれることがあります。
ABIとSPPは、同じように血液の流れを見る検査なのですが、見ている場所が異なります。
ABIは血圧(血管の中を血液が通るときの圧力)を見ているのに対し、
SPPは皮膚の表面の微小な血液の流れを見ています。
検査の目的が異なるので、症状によってはABIとSPP、両方の測定が必要となるのです。
下肢動脈エコー
超音波を当てて、血管の状態を確認する検査です。
メリット | 痛みが少ない 外来でも簡単に、そして繰り返し施行できる(施行時間は30分から1時間程度) 造影剤など、特別な薬剤を使用しない |
デメリット | 患者さんの状態によっては病変が十分に観察できない 例えば…石灰化→石灰化の部分は見えにくい 肥満→そもそも血管が見えにくい |
下肢動脈CT・MRI
CTやMRIの装置を使って血管の状態を確認する検査です。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、たいていはどちらかの検査を一つ選んで施行されます。
血管や全身の状態、下肢の症状の重さなどによっては、両方の検査を行うこともあります。
造影CT検査(CT angiography) | MRI検査(MR angiography) | |
メリット | ・画像がキレイ ・広い範囲を一度に撮影できる |
・造影剤を使わなくても良い場合がある(ヨードアレルギー患者さんにも施行可能) ・石灰化に邪魔されることがない |
デメリット | ・放射線の被ばくがある ・造影剤のアレルギーがある方・ヨードアレルギー患者さんは施行できない |
・ ペースメーカー、人工内耳などの人工物が埋め込まれている患者さんは施行できないことがある ・検査中に患者さんが動くと画像がぶれる |
運動負荷試験
ベルトコンベアの上を、決められた速度、傾斜、時間(速度:時速2.4km、勾配:12%、歩行時間(負荷時間):6分間の場合が多い)で歩く検査です。
- ABIが下がるか、下がるとすればどのくらい下がるか
- 症状がどうなるか
を見る検査です。
下肢動脈造影
カテーテル(細長い管)を手首や足の付け根の血管から挿入し、動脈の中に直接造影剤を入れて撮影を行う方法です。
一番鮮明な画像が取れますが、穿刺部(せんしぶ;刺した部分)の出血などの合併症の危険があります。
まとめ
閉塞性動脈硬化症を疑うときに行う検査について、簡単に解説しました。
いくつかの検査を取り上げましたが、閉塞性動脈硬化症をはじめとした「血管のつまり」を疑う病気の場合、一つの検査だけを行って診断をつけるということは、ほとんどありません。
診断の手順としては、
- まずABI→異常値がでれば下肢動脈エコーおよびCT/MRI、
- ABIが低いのに症状がはっきりしない場合には運動負荷試験を追加
- 潰瘍・壊死がある場合には全例SPP
- 薬物療法・運動療法で症状が取れないケースには(治療を前提として)血管造影検査
みたいな感じで進めることが多いです。
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