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医学部、そして医師を目指す女子高生に、先輩女医から伝えたいこと

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  • 学校の成績が良くて、親や先生に勧められたから…
  • 資格が取れるから…
  • ドラマでかっこいい女医さんを見たから…

様々な理由で医学部、そして医師を目指す女子高生が増えていると聞きます。

先輩女医としては、当然嬉しいといえば嬉しいのですが、同時に「ちょっと待ったー!」と思わざるを得ません。

 

というのも、

[chat face=”profile-nico100.jpg” name=”YURALICA” align=”left” border=”red” bg=”red”]女医になることは比較的簡単だけど、「女医でい続けること」というのは決して甘くない [/chat]

ということを身に染みて感じる今日この頃を過ごしているからです。

(個人的には、医師免許を持っているだけで医師として仕事もできない(orしない)のに女医を名乗られてもちょっと…という思いがあります。)

 

というか、なってみなければわからない」「女性ならではの」現実というものがあることを、医師になってから知りました…

 

苦しい思いをして、中には浪人までして医学部に入り、学生時代にせっかく苦労して医師免許を取ったのに、結局医師として働いていない女医も大勢います。

 

こんなはずじゃなかった…」とか言いながら、ね。

 

 

なので、今ならまだ引き返せる「女子高生」にリアルな女医の現実をお伝えし、

  • 本当に自分の意思で医師になりたいのかどうか
  • そして自分はどんな医師になりたいのか
  • さらにどんな人生を歩みたいのか

一度立ち止まって考えるきっかけとなれば、と思います。

先輩女医、というかおばちゃんの戯言と思って聞いていただければ幸いです。

 

 

■目次

卒後おおむね20年余りを経過した、女医の数値的な現実

「女医の現実」の1例として、とある国公立大学医学部医学科出身の私の同期の女性たちについて考えてみます。

私の時代、出身大学の医学部医学科の入学定員は、男女合わせて100人。

同時に卒業したのは、留年生と合わせて大体110人くらい。
そのうち、女性は私を入れて24人くらいだったはずです。

 

24人中、地元に戻るなどして行く末がわからない人間もいますが、
基本的には20人以上が臨床医(病院でお医者さんとして働く人)を選択しています。

このうち、卒後20年弱の時点で、フルタイム(常勤医、というやつですね。9-17時まで病院にいる人)で勤務しているのは、私も含めて半数以下。

救急車などが頻繁にくる急性期病院の勤務となると、5,6人になります。

さらに、このうち、当直勤務までこなしているのは、おそらく2人です。
(外科と内科、1人ずつ)

ちなみにこの2人は、独身もしくは子なし既婚です。

 

この理由は簡単です。

結婚している女医のほとんどは、男性医師を伴侶にしているから。

です。

 

女医と結婚のケーススタディ1 転勤もしくは留学

男性医師と女性医師が結婚します。

当初は、それぞれの医局や所属先も色々考慮してくれて、(希望すれば)一緒の病院もしくは同じ地域の病院で働くことができることがほとんどです。

 

ところが数年後、どちらかに転勤もしくは留学の話が持ち上がります。
(確率論および経験則的に、この手の話が持ち上がるのは男性の方が圧倒的に多い)

どちらかが今の仕事を辞めなければ、一緒に暮らすことはできない。

 

そうなると、仕事を辞めるのは、ほとんどが女性医師です。

 

一般社会と同じですね。

医師の仕事も、一度離れてしまうと元のポジションに戻るのは極めて難しいため、
大抵の場合、女性医師のキャリアはそこで途切れることになります。

(運が良ければ、そして受け入れ先があれば、自分も一緒に留学する、という人もいます。)

 

女医と結婚のケーススタディ2 子どもができた

男性医師と女性医師が結婚します。

めでたく子どもができました。

 

子どもを産むためには、仕事を休まなくてはいけません。

うまいこと、悪阻がほとんどなくても、さすがに臨月まで働くことは難しいです。

 

さらに、出産後1週間で元通りの勤務に就くことはほぼ不可能です。

だいたい、少なくとも2か月は育休を取るでしょう。
最近は1年間の育休を取る場合も少なくありません。

 

留学と同じく、育休を取るのは、ほとんどが女性医師です。

(逆に「男性が育休を取る」と聞いたら、私を含め大抵の医師は非常に驚く。
そのくらい、男性医師で育休を取る人間は少ないです。)

 

女性医師の伴侶の大多数が男性医師であることを考えると、
大抵の女性医師は、いわゆる「ワンオペ育児」を強いられます。

(これは男性医師が悪いというわけではなく、医師全体の長時間労働の問題の方が大きいと思います。)

そうなると、出産後数年間は(少なくとも常勤の)仕事に戻れません。

 

そうこうしているうちに第2子、第3子が誕生し、
気がついたら一線から離れて10年たっていた、ということになります。

 

女医と結婚 まとめ

以上をまとめると、よほど条件のよい恵まれたケース以外、(結婚&)出産によって
ほとんどの女医が一線を離れざるを得ません。

  • 当直で自分が家を空けても祖父母(もしくは旦那)が子どもの面倒を必ず見てくれる
  • 夜中に病院から呼び出しがあっても、必ず子どもを見てくれる人間がいる
  • 24時間保育の素晴らしい保育園/シッターがいる

というケースは、稀です。

 

つまり、「医師として大成したければ、一般的な結婚を諦める必要がある」ということになります。

 

例外は、結婚相手がものすごく理解のある人&家事を一通りこなせる人である場合。
極めて稀

このパターンにハマれば、仕事も家庭も高いレベルで両立させることが可能です。

 

実際に、子どもが複数いながら、夫婦で循環器内科医という比較的激務の診療科に従事し、
夫婦で交代して当直/家事をしているご夫婦を2組ほど存じ上げております。

どちらのご夫婦も、忙しいながらもとても幸せそうです。

勤務先の病院もさることながら、ご主人がきちんと妻の仕事を理解&応援しているというのが伝わってくる素敵なご夫婦です。

 

医師の世界は、いまだ男尊女卑である

今時の女子高生や医大生の皆さんは、「男女は平等」というのが当たり前の時代に学生生活を送っています。

私たちの頃ですら、そうでした。

 

ですが、医師の世界は違います

確実に、男尊女卑がまかり通っています。

 

2018年に世間をにぎわしている東京医科大学の不正入試事件でも現役/1浪の男子が優遇され、女子と2浪以上の男子が冷遇されていました。

医師になってからもいろいろあります。

例えば、各学会の理事や役員の名簿を見てみましょう。

現時点では、女性医師が1人でも入っている学会の方が少ないです。
(現在は、色々な学会で女医の支援を行っており、●%女医を理事に入れる、というのを決めている学会もありますが。)

 

昔は男の方が圧倒的に多かったのもありますが、女医の間でまことしやかに囁かれているのは、

女医は男性医師の2倍以上仕事ができないと1人前として扱われないが、
3倍以上仕事ができると、嫉妬を受けて引きずりおろされる

10倍以上できるスーパーウーマンの場合は別。)

という格言です。

これ、実感として、だいたい合っていると思います。

 

そもそも、男性の2倍仕事ができるためには、当然2倍勉強をする必要があります。

 

同じ時間仕事して、仕事しながら2倍勉強して、家に帰ったら(帰れたら)家事をする。

ここまでして、ようやく1人前です。

 

例えば学会などで積極的に活動をしようと思ったら、その上さらに勉強して、研究会などにはマメに顔を出し、懇親会などにも積極的に参加して、という必要があります。

(有力者に気に入られている場合はこの限りではない。)

 

独身で仕事に人生をかけている女医以外は、なかなか難しいことだと思います。

 

それでも医師は、素晴らしい仕事だと思う

では、私は医師になったことを後悔しているのでしょうか?

 

いいえ、そんなことはありません。

 

  • 人が相手の仕事ですから、正直なところ、辛いことも多いです。
  • 最近は、書類仕事などの雑務も非常に多く、昔よりも余分な仕事に時間がかかります。
  • スタッフさんとの軋轢に苦慮することもあります。

 

でも、それを差し引いても、一生を賭けるに値する素晴らしい仕事だと思っています。

 

  • あなたが一生懸命に仕事をすれば、泣いて喜んでくれる人がたくさんいます。
  • 何もしなくても、「先生の顔を見ると、それだけで元気になる」と言ってくれる患者さんがたくさんいます。
  • 結局助けられなかった患者さんの家族から、「先生が主治医でよかった」と言っていただけることすらあります。
  • その気になれば、一生をかけて勉強し、自分の知識や技術を高めることができます。

こんな仕事って、他にはなかなかないと思うんです。

 

だから、甘くない現実があることを理解したうえで、自分の意思で医師を目指す女子高生が増えてくれればうれしいな、と思います。

 

 

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