日々の外来でよく患者さんから質問をいただく内容のうちのひとつが、
[chat face=”woman1″ name=”患者さん” align=”left” border=”red” bg=”red”]「水分補給」って、何をどのくらいいつ飲めばいいの?[/chat]
ということです。
もちろん、おひとりおひとりの年齢や性別、活動量や持病などによって必要な水分量やその内容は異なるのですが、今日は「熱中症対策としての水分」という点にしぼって簡単に解説します。
■目次
熱中症対策の水分補給のポイント
熱中症対策の水分補給のポイントは、環境省 熱中症予防情報サイトに掲載されている
熱中症環境保健マニュアル 2018によくまとめられていますので、そのまま引用します。
・こまめに水分補給
・のどが渇く前に水分補給
・アルコール飲料での水分補給は×
・1日あたり1.2ℓの水分補給
・起床時、入浴前後に水分を補給
・大量に汗をかいた時は塩分も忘れずに環境省 熱中症予防情報サイトより
熱中症環境保健マニュアル 2018
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
これについて、解説を加えていきます。
①こまめに水分補給
汗をかくと、身体から水分が抜けていくのが見えるので、ほとんどの人は
[chat face=”man2″ name=”男性” align=”left” border=”blue” bg=”blue”]あ、水のまなくちゃ。[/chat]
と思います。
ところが、汗をかいていなくても、人間のカラダからは少しずつ水分が蒸発しています(=不感蒸泄(ふかんじょうせつ))。
この不感蒸泄の量は、体温が上がったり、呼吸が速くなると多くなります。
ということで、夏は冬よりも不感蒸泄が多くなりがちです。
不感蒸泄は24時間起こっていますので、水分も少しずつこまめに摂る必要があるのです。
②のどが渇く前に水分補給
特に高齢者の場合、のどが渇いた時にはすでに遅く、身体の中は相当乾いて脱水になっていることが多いです。
のどが渇く前に、時間を決めて定期的に水分を補給する習慣をつけましょう。
③アルコール飲料での水分補給は×
アルコールには、利尿作用(カラダの中の水分を尿として外に出す働き)があります。
冷たいビールを飲むとなんとなくイイ感じがするかもしれませんが、水分補給という観点から見るとあまり意味はありません。
④1日あたり1.2ℓの水分補給
出典;環境省熱中症予防情報サイト
熱中症環境保健マニュアル2018
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
人間のカラダは、体重70㎏の人で1日におよそ2.5ℓの水分の出入りがあるとされています。
2.5ℓのうち、1.2ℓは飲む水分として補給する必要があるのです。
⑤起床時、入浴前後に水分を補給
夜寝ているときは、汗をかくのに水分を補給できないため、朝起きたときのカラダの中は乾いています。
また、入浴中も同じように汗をたくさんかいています。
- 朝起きたとき
- 入浴前後
は、いつも以上にしっかりと水分を摂りましょう。
[chat face=”458658.jpg” name=”サチコさん” align=”left” border=”yellow” bg=”none”]運動する前にもコップ1杯の水分を忘れずに![/chat]
⑥大量に汗をかいた時は塩分も忘れずに
汗の中には、水だけではなく塩分が含まれています。
大量に汗をかいたあとで水のみを補給すると、身体の中の塩分が足りなくなり低ナトリウム血症を起こします。
▼低ナトリウム血症については後日アップ
低ナトリウム血症を予防するためには、ちょうどよい塩分の含まれたスポーツ飲料などでの水分補給が必要になります。
ちなみに、運動中や仕事中は必要な水分をその場で補給できないことも多いので、家に帰った後も、次の日までこまめな水分補給が必要となります。
熱中症のときに補給したい水分の中身
「水分補給」というと何となくスポーツドリンクや経口補水液を思い浮かべがちですが、日常生活における熱中症の予防目的であれば、とりあえず水やお茶(ノンカフェイン)で大丈夫です。
水やお茶以外に「水分補給」としておススメしたいのが、梅昆布茶やみそ汁です。
熱中症予防には梅昆布茶やみそ汁がおすすめ
梅昆布茶やみそ汁には、糖分がほとんど含まれていない代わりに塩分とミネラルが豊富に含まれています。
スポーツドリンクを飲みなれない高齢の方でも、梅昆布茶やみそ汁なら、1日にカップ1杯程度は飲めることが多いです。
どちらも、粉末もしくはフリーズドライ・パウチ状など、携帯しやすい形のものも市販されていますので、一家にひとつ常備しておくと良いのではないでしょうか。
[chat face=”profile-nico100.jpg” name=”YURALICA” align=”left” border=”red” bg=”red”]主治医から塩分の摂取を制限されている場合には、主治医の先生と良くご相談ください。 [/chat]
経口補水液の上手な使い方
「経口補水液」というネーミングから、「熱中症対策に毎日飲むといいんじゃない?」という声も良く聞かれる経口補水液。
[chat face=”profile-nico100.jpg” name=”YURALICA” align=”left” border=”red” bg=”red”]普通の元気な大人は、日常生活では必要ありません。 [/chat]
市販の経口補水液は、もともt発展途上国での乳幼児の脱水症の予防や治療、特にコレラによる脱水の治療のために、世界保健機関が開発したものです。
下痢や嘔吐がひどいときは、通常は水を飲んでも腸で吸収されずにそのまま出て行ってしまうのですが、経口補水液はそのようなときでも水分やミネラルが吸収されやすいようにつくられています。
経口補水液を飲んだことがある方ならお分かりだと思いますが、
- 普通に飲んだら美味しくない
- 熱があるときや、下痢・嘔吐がひどいときに飲むと美味しい
のは、そのように作られているからなのです。
健康な人はスポーツドリンクでも大丈夫
健康な人が大量に汗をかいたときの塩分や電解質の補充はスポーツドリンクでも大丈夫です。
ただし、通常のスポーツドリンクは運動時の糖分・栄養補給もかねて作られているので、熱中症対策という観点からみると、どうしても糖分が多めなのは頭に入れておいてください。
健康な人が経口補水液を飲んだ方がよいとき
健康な人でも、下痢やおう吐がひどい、発熱がある、汗を大量にかいた、夏バテで食事が摂れないなどの場合は、経口補水液での水分補給を積極的におススメします。
高齢者の場合は経口補水液を定期的に飲んでもよい
ただし、高齢の方の場合は例外的に、経口補水液を定期的に飲むことをおススメすることもあります。
というのも、高齢者はもともと脱水気味の方が非常に多く、食事が細い方だとさらに塩分もきちんととれていないことがあるからです。
飲み込みがイマイチ良くない方のために、ゼリー状になった経口補水液もありますので、良かったら利用してみてください。
経口補水液は家庭で作ることができる
実は、経口補水液と同じような中身の水分は自分で作れます。
▼詳しくはこちらにまとめました。
経口補水液を飲むときの、1日量のめやす
実は、経口補水液はどれだけ飲んでもよい、というものではありません。
日本で最も利用されている経口補水液OS-1の場合は、下の量が1日に飲んでよい量の目安となっています。
- 学童から成人(高齢者を含む);500 ~1,000mL /日
- 幼児;300 ~ 600mL /日
- 乳児;体重1kg 当たり30 ~ 50mL /日
まとめ>熱中症対策の水分補給。のどが渇く前にこまめに水を飲もう。
ということで、熱中症対策の水分補給のコツについてまとめました。
日本救急医学会
熱中症診療ガイドライン2015
環境省 熱中症予防情報サイトより
熱中症環境保健マニュアル 2018
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
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